琉球舞踊家 平敷屋門勇也の舞台写真
About ・ 沖縄の伝統芸能

琉球舞踊とはWhat is Ryukyu Buyou

Section 01
沖縄の歴史と心を、
身体で語る芸能— Introduction —
平敷屋門勇也 琉球舞踊の構え
A Living Tradition of the Ryukyu Kingdom

ただの踊りではない
琉球の歴史そのもの

琉球舞踊(りゅうきゅうぶよう)は、沖縄で生まれた伝統的な踊り。けれど、それは「踊り」という言葉だけでは収まらない芸能です。沖縄の歴史、文化、言葉、音楽、人々の心――そのすべてを身体で語る、生きた表現の場。

沖縄はかつて「琉球王国」という独立した国でした。琉球舞踊は、その王国の中で発展した芸能。だから琉球舞踊を知ることは、沖縄の歴史を知ること。そして、人々がどんな思いで生きてきたかを知ることでもあります。

このページでは、500年の時間を超えて受け継がれてきた琉球舞踊の世界を、歴史・分類・衣装・鑑賞のポイントから、ご案内します。

Section 02
500年の、舞の歴史— A 500-Year Journey —
Chapter I琉球王国時代

もてなしの芸能として、生まれる。

琉球舞踊が大きく発展したのは、約500年前の琉球王国時代。当時の琉球は、中国、日本、東南アジアと貿易を行い、さまざまな文化が沖縄に流れ込んでいました。

特に中国との交流は深く、中国から来た使節(しせつ)をもてなすために、王府――王国の政府――は芸能を発展させていきます。この「お客様をもてなすための芸能」が、琉球舞踊の土台となりました。沖縄独自の文化に、中国文化、日本文化が混ざり合って生まれた、混淆の芸能なのです。

Chapter II1719年・組踊の誕生

玉城朝薫、「組踊」を創る。

1719年、踊奉行(おどりぶぎょう)の玉城朝薫が、音楽・せりふ・踊りで物語を表現する舞台芸術「組踊」を創作。これは琉球版の歌舞伎・能ともいえる総合芸術でした。

この組踊の中で踊りの技術はさらに磨かれ、後の琉球舞踊に大きな影響を与えていきます。物語を中心とした組踊と、踊りそのものを中心に発展した琉球舞踊。2つは、深く呼応しながら歩んでいきました。

Chapter III1879年・明治以降

王族の芸能から、人々の芸能へ。

1879年、日本政府によって琉球王国は廃され、沖縄県となりました(琉球処分)。王府に仕えていた踊り手たちは仕事を失います。けれど、芸能そのものは消えませんでした。

踊り手たちは民間で活動を続け、芝居小屋、お祝い、地域行事、お祭りなどで踊るようになります。ここから、琉球舞踊は「王族のための芸能」から、「人々の芸能」へと広がっていきました。

Chapter IV戦後・復興と継承

戦火を越えて、未来へ。

第二次世界大戦の沖縄戦では、多くの文化財や芸能が失われました。けれど戦後、人々は「沖縄の文化を残したい」という強い思いで、琉球舞踊を復活させていきます。

今では、学校教育、伝統芸能公演、地域文化、海外公演など、あらゆる場で受け継がれています。2009年には、組踊がユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

Section 03
大きく、2つの世界— Two Main Categories —
古典舞踊・女踊りの舞台写真
No. 01

古典舞踊

こてんぶよう ・ Classical Dance

王国時代、王族や中国使節をもてなすために踊られた、格式高い舞踊。感情を大げさに表現するのではなく、内側に宿る「静の美」を伝えます。

  • 動きはゆっくり
  • 無駄が少ない
  • 気品がある
  • 所作に意味
代表演目 /かぎやで風/若衆こてい節/四つ竹/本貫花 ほか
古典舞踊・女踊り 傘を使った演目の舞台写真
No. 02

雑踊

ぞうおどり ・ Folk Dance

明治以降、人々の暮らしをテーマに作られた踊り。古典より親しみやすく、表情も豊か。農民、漁師、商人――普通の人々の生活が描かれます。

  • 明るい
  • わかりやすい
  • 動きが大きい
  • ユーモアも
代表演目 /鳩間節/加那ヨー天川/むんじゅる ほか
Section 04
古典の、4つの顔— Four Classical Genres —
No. 01

老人踊

Roujin-odori

年配の人物を演じる踊り。ゆったりとした動きで、人生経験や落ち着きを表現する。

代表演目かぎやで風
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No. 02

若衆踊

Wakashu-odori

若い男性を表現する踊り。力強さと美しさ、品の良さが同居する。昔は男性のみが踊った。

代表演目若衆ゼイ
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No. 03

女踊

Onna-odori

女性の優雅さを表現する踊り。柔らかな手の動き、静かな感情、控えめな美しさ。勇也が最も得意とする世界。

代表演目四つ竹
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No. 04

二才踊

Nisai-odori

青年男性の踊り。若者らしい元気さと勇ましさ。鍛えられた構えと足の運びが見せ場。

代表演目高平良萬歳
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Section 05
色と柄に、意味がある— Costume & Bingata —
琉球舞踊の伝統衣装「琉装(りゅうそう)」

琉球舞踊の衣装は、「琉装(りゅうそう)」と呼ばれる、琉球王国独自の衣装文化。中国や日本の影響を受けながらも、沖縄の強い太陽と豊かな自然の中で、独自の鮮やかさを獲得していきました。

大胆な色使い、南国の花や鳥の柄、海と波。そのすべてに、意味がある。実は、王国時代には、自由に好きな色を着ることは許されませんでした。色には「身分」や「立場」、そして「祈り」が込められていたのです。

No.01 / Ki-iro
黄色

最も位が高い、王族の色。太陽のような特別な色として扱われた。

No.02 / Murasaki

高貴さと品格の色。古典舞踊で気品を伝える、重要な色。

No.03 / Aka

生命力と祝福。祝いの舞踊、華やかな女踊によく見られる。

No.04 / Ao

沖縄の海と空を感じさせる、爽やかな色。雑踊にも多い。

No.05 / Shiro

清らかさと神聖さ。衣装の内側や、足袋などに使われる。

No. 06 ・ Bingata

紅型

びんがた ・ Okinawa's Traditional Dyed Cloth

「紅」は多彩な色、「型」は模様――その名の通り、沖縄を代表する色彩の染物。琉球王国時代には王族や士族の衣装として使われ、女踊では今もなお舞台の華となっています。

南国の花や鳥、海や波、植物。沖縄の自然そのものが、布の上に咲く。舞台に紅型衣装が登場した瞬間、空気が一気に変わる。それが、琉球舞踊の衣装の力です。

紅型写真:OKINAWACLIP よみもの記事より引用
Section 06
鑑賞の、4つの視点— How to Watch —
Before you watch

全部を理解しようとしなくて、大丈夫。
感じること、気づくこと。
そこから、琉球舞踊の世界が、ひらいていきます。

Point 01

「静けさ」の
美を味わう。

琉球舞踊は、激しく動く踊りではありません。ゆっくり、静か、丁寧に。けれどその静けさの中にこそ、喜び・恋しさ・悲しみ・敬意が宿る。少しの動きに、大きな意味がある芸能です。

Listen carefully呼吸の間(ま)に、耳を澄ます
Point 02

「手の動き」を
追いかける。

琉球舞踊の手は、ただ動いているのではありません。花、波、恋心。指先1本で、物語が描かれます。手のひらが上を向く時、下を向く時。その違いに、こめられた感情を感じてみてください。

Watch the hands花のように、波のように
Point 03

「足運び」と
「目線」を見る。

静かに見える足運びは、実はとても高度な技術。重心の移動、床との会話があります。そして目線――どこを見ているか、誰を思っているか。視線の先に、踊り手が描く世界が広がっています。

Follow the gaze視線の先に、物語がある
Point 04

「衣装の色と柄」を
読む。

踊り手が黄色を着ていれば、それは王族を意味します。波の模様には、命や旅や永遠が込められている。色と柄を「読む」ことで、舞台の意味は何倍にも深くなります。衣装は、もう一つの台詞です。

Read the costume色は身分、柄は祈り
Point 05

「音楽の流れ」に
呼吸を合わせる。

三線、歌、箏、笛、太鼓。踊り手は音を「数える」のではなく、音楽の流れに呼吸を合わせます。観る側も同じです。リズムを取ろうとせず、音と一緒に息をする。それが、舞台と1つになる瞬間です。

Breathe with music三線の音色を、身体で聴く
Point 06

「型」の中の
個性を見る。

琉球舞踊には、長い歴史の中で受け継がれてきた「型」があります。自由に見えて、実は細かいルールがある。だからこそ、上手な人ほど、自然に見える。型の中で、それぞれの踊り手がどう自分を表現しているか――それも鑑賞の醍醐味です。

Within the form型の中に、その人がいる
Section 07
舞踊の心臓、三線。— Sanshin & Music —

音楽と一体になって、
はじめて舞踊になる。

琉球舞踊において、音楽は伴奏ではなく、舞踊そのものの一部です。中心となるのが三線(さんしん)。蛇皮を張った三本弦の楽器で、沖縄音楽の心と呼ばれています。

三線の音色、歌い手の声、箏や笛の旋律、太鼓のリズム。踊り手は音を数えるのではなく、音楽の流れに呼吸を合わせていきます。だからこそ、舞踊は生きる。同じ演目でも、その夜の三線の調子で、踊りが少し違って見える――それが琉球舞踊の生きた魅力です。

三線Sanshin
Uta
Koto
Fue
太鼓Taiko
胡弓Kucho
三線SANSHIN
"

静かな動きの中に、礼儀、品格、
感情、歴史を込める芸能。
少しの動きに、大きな意味がある。
そこが、琉球舞踊の1番深い魅力です。